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12 and Holding 12歳のホールディング

アメリカ映画 (2005)

コナー・ドノヴァン(Connor Donovan)、Jesse Camacho、Zoe Weizenbaumの3人、それぞれの12歳が犯す「ホールディング」を描くドラマ。原題の “Holding” をどう捉えるかだが、日本語として定着しているのは、サッカーやバスケのホールディング(ルール違反によるファウル)と、心理学用語としてのホールディング(子供が安心して暮らせる心的空間)。この映画では、3人とも異常な行動に出て、いずれも社会的な規範から逸脱する。その意味では、スポーツ用語のホールディングに該当する。しかし、3人がそうした行動を取る背景にあるのは、歪んだ家庭環境にあるので、それらは子供が安心して暮らせる心的区間(ホールディング)ではない。従って、この映画の題名の「ホールディング」は両方の意味を併せ持っているものと解釈していいだろう。どちらとでも取れるように、仮の邦題も「ホールディング」をそのまま残した。最初に「3人」と書いたが、メインストリームはコナーが演じるルディとジェイコブの双子の兄弟。兄のルディは普通に産まれて育ち、何事にも活発な男の子。弟のジェイコブは、顔の左半分に母斑(赤アザ)があるため「普通でなく」産まれ、それが一種の心的障害となって育ち、何事にも引っ込み思案の男の子となった。ある夏の日に、ルディが、虐めっ子の不良2人に対し、ツリーハウスから極端なやり方で反撃したことから、大変な事件が起きる。重荷を背負ったジェイコブがどう生きていくかが映画の主軸。一方、過食症一家のレナードは、その事件に巻き込まれて「無味覚症」になる。超肥満児だったレナードはそれで一変する。中国人と結婚したセラピストを母に持つメイリーは、小生意気で思春期の真っ最中。3倍も年上の母の患者にラヴしてしまう。この映画はIMDbで7.6、Rotten Tomatoesでは73%という評価を得ている。7.6は高すぎで(7を超えるものは少ない)、73%が妥当であろう(80%以上なら高評価)。理由は、3人の話の接点がごく僅かなことと、メイリーのパートが浮いていて、しかも冗漫で不愉快なこと。メイリーの出番を半分にして、ジェイコブの出番を倍にしていれば、もう少しまとまった映画になっていただろう。なお、この映画の結末には、賛否両論があると思う。私は「否」。

映画は、夏、ルディとジェイコブの双子の兄弟の12歳の誕生日から始まり、それから1年近くの出来事を、2人の親友レナードとメイリーのシーンと常時交錯させながら時系列的に進んでいく。ここでは、コナーが演じる双子の兄弟の視点から内容のみ要約しよう。誕生日に不良のジェフとケニーに追いかけられたルディは、森の中のツリーハウスに逃げ込むと、貯めておいた自分の小便を敵の頭からかける。それに激怒した2人は、ツリーハウスを破壊すると脅す。ルディとレナードは、自分達のツリーハウスを守ろうと、徹夜で見張ろうとして眠ってしまう。中に2人がいると知らない不良たちは、ツリーハウスに火炎瓶を投げつけて全焼させる。何とか逃げ出したレナードは梯子から落下して無味覚症になり、ルディは焼死する。ルディに誘われても「防衛」に参加しなかったジェイコブは、恐らく自分を責め、不良2人に激しい怒りを覚える。やがて裁判が行われ、ルディの死は事故で、ジェフとケニーに殺意はなかったと認定され、1年の懲役という軽い刑で済み、双子の母は激怒する。ジェイコブは、レナードとメイリーと相談し、自ら少年刑務所に行き、2人に怒りをぶつける。それを何度もくり返すうち、主犯格のジェフは独房内で自殺する。母は喜ぶが、ジェイコブは自分がした行為は正しかったのか、迷ってしまう。クリスマスになり、ジェイコブは、母から「プレゼント」と称して、いきなり、養子を取ることにしたと聞かされ愕然とする。その対策を3人と相談した際、メイリーから 片思いの男性宅から盗み出した拳銃を預かってくれるよう頼まれる。一方、少年刑務所通いでは、ジェイコブは 1人残ったケニーと次第に親しくなっていく。そんな時、大きな変化が起きる。何年も先のことだと思っていた養子、赤ちゃんだと聞かされていた養子が、突然連れて来られる。それは、年齢もあまり変わらない黒人の子だった。ケニーは、早期釈放が決まり、他の州に逃げていって父親と一緒に牧場で働こうと計画している。その話を聞いたジェイコブは、養子への怒りから、家にはもういたくなくなり、ケニーに同行させて欲しいと頼む。しかし、その出奔の日、母から自分に対する愛を聞かされたジェイコブは、ケニーとの同行をやめ、逆に、預かった拳銃でケニーを撃ち殺す。映画を観ていて抱くのは、表面的な流れは以上のようだが、ジェイコブは、いつケニーの殺害を決心したのだろうかという疑問。最後に少年刑務所を訪れた時、彼は「あれは事故だった」と言ってケニーの行為を許した。それは、一緒に逃げることを認めさせるための嘘だったのか? それとも、その時点では本気で同行する気だったのか? 彼がいつ「ケニー射殺」を決断したのか、判断できる手がかりは何もない。

コナー・ドノヴァンは、『Our Town』(2003)というTV映画が 映画初出演で、本作は2本目で初主演。主演の3人は何れも1991年生まれなので、「12歳」という映画の設定からして、映画の撮影は2003年頃ということになる。コナーは、アカデミー作品賞をとった『ディパーテッド』(2006)で、マット・デイモン扮するColin Sullivanの少年時代を演じているが(下の写真)、子役時代はそれで終わる。
  


あらすじ

画面は黒。虐めっ子の声だけが聞こえる。「お前の尻に3つ目のアザをつけるぞ。ホッケーマスクを剥ぎ取って、お前のケツの穴に突っ込んでやる〔shove it right up your butt〕!」。ここから映像が始まる。2人の男の子が森の中を逃げるように自転車をこいでいる。前を行くのはルディ、ホッケーマスクはジェイコブ(1枚目の写真)。双子の兄弟で、2人が走っているのは、父の所有する4ヘクタールの森の中。2人はツリーハウスに着く。ジェイコブの頭に投石が当たる。先ほど、汚い口調で罵った虐めっ子たちが投げたものだ〔父の所有地といっても、自然の森なので出入りは自由〕。ルディはいち早くツリーハウスに上がり、何事にも遅いジェイコブが昇ってくるのを助けてやる(2枚目の写真)。ジェイコブが中に入ると、ルディはさっそく窓の下に置いてあった大きなバケツのフタを取る。「それ何?」。「しょんべん」〔この会話から、ジェイコブは、このツリーハウスにあまり来ないことが分かる〕。2人の不良が梯子を登り始める。すると、先頭のケニーの頭目がけて、ルディは小便を浴びせる(3枚目の写真)。ケニーは、「お前と、くそウザい〔ugly-ass〕弟を殺してやる」と怒鳴り、上から嬉しそうに見ていたルディは、「いつでも待ってるぞ、アホンダラ〔dickhead〕」とあざ笑う。
  
  
  

双子の友達は2人。そのレナード家の食事中の映像(1枚目の写真)。全員が脂ぎったものを過食し、特にレナードは高度の肥満児。映画では、もう1人のメイリーという中国系の女の子についても紹介するが、①このサイトでは少女は対象外、②メイリーが映画の中で行う行為は非常に不愉快、③演技自体が下手で見ていられない、④その割に全映像時間の36%を彼女と、その母(Annabella Sciorra)、20歳以上も年上の「片思いの恋人」(Jeremy Renner)の3人で占有し、本来はジェイコブの物語であるべきストーリーを分断し破壊している、の4つの理由から、あらすじでは ジェイコブの絡む僅かの部分以外はすべて削除する。ツリーハウスでは、ルディが、ジェイコブに文句を言っている。「僕らの誕生日は年に1回だ。お前は、ホッケーマスクを頼んだ〔今朝、もらったばかり〕。プレーする気もないのに。『13日の金曜日』のジェイソンが被ってるけど、あいつはヤバい〔bad-ass〕んだぞ」(2枚目の写真)。その時、ツリーハウスの下にレナードとメイリーが自転車でやってくる。ルディは、さっそく、「ケニーの頭におしっこをぶっかけてやった」と自慢する。メイリー:「何て?」。「ジェフとケニーがここに来たから、貯めといたおしっこを奴らの頭からかけてやったんだ」。レナード:「なんで、貯めといたんだ?」。「万が一さ〔Just in case〕。超サエてる〔Pretty smart〕だろ」。ジェイコブは「愚の骨頂だ」と反論する。「今に奴ら戻って来て、僕らメタメタにされちゃう〔kick all of our asses〕」。「いちいちムカつくな〔such a butt munch〕」。2人は争い始める。下から、メイリーが、「今日は誕生日なんだから、仲良くしたら」と声をかける(3枚目の写真)。
  
  
  

その夜、母は双子のツーショット写真を撮り、父は「今朝は小さなプレゼントだったが、今度は大きなプレゼントだ」と言ってルディに大きな箱を渡す。ニンテンドーのゲームキューブだ。ルディは、「すごいや」と大喜び(1枚目の写真)。ジェイコブは、「気に入った?」と母に訊かれ、「ありがとう」の一言。あまり明るい性格ではない。そして、画面は7月4日 の独立記念日に変わる。服装からして、ほとんど日が経ってない感じ。「町内」の人達が数十人集まり、空き地にイベントテントを張って騒いでいる。その時、父に、地元のディベロッパーが寄って来て、「10エーカー〔約4ヘクタール〕の土地だがな」と声をかける。父:「あそこは売らん」。「最高額をつけるぞ。幾ら出す積りか知らんだろ。手に書いて見せてやる」。「うちの子供たちがあの森でいつも遊んでるんだ。値の付けようがないぞ」。「付けられるさ」。手の平に書いた数値を見た父は 意に反して迷う。会場の一角では、ルディがケニーとジェフから何か言われて揉めている。そして、3人の座っているテーブルまで来ると、「あいつら、今夜ツリーハウスをぶっ壊すって言うんだ。止めないと」と訴える(2枚目の写真)〔これは、小便をかけられたことに対する復讐なので、その点からも、翌日か数日後であろう〕。ジェイコブは、「それで? ただのツリーハウスじゃないか」と気のない返事(3枚目の写真)。ルディ:「サイテー〔You suck〕。レナード、お前は?」。ジェイコブは「行きたくなければ、行かなくてもいいぞ」と言うが、レナードは「行くぞ」と頼もしい返事。ジェイコブは、その場から立ち去る。
  
  
  

夜になって自宅に帰ったルディは、ツリーハウスを守りに行く準備をしながらジェイコブを皮肉る。「ジェフとケニーにいつもいびられてる〔pick on〕くせに、お前は何にもしない〔don't do shit〕」。「僕の問題だ」。「違うな、僕の『問題』でもある。僕らは兄弟だからな。それが〔That's what〕兄弟なんだ」(1枚目の写真)。「そんな感じ しないよ〔I don't feel that way〕」。「お前が弱虫〔pussy〕だからさ」。そう捨て台詞を残すと、ルディはバットを持って窓から出て行った。ジェイコブは、自分が大きな間違いをしてしまったのかと心配になり、「ルディ」と呼びかけるが(2枚目の写真)、もういなくなったか、無視されたかのどちらか。ツリーハウスに来たレナードは、懐中電灯に加え(3枚目の写真)、スナックを3袋も持ってきた。太るのは当然かも。ルディ:「眠るなよ」。レナード:「目はパッチリだ」。しかし、次の映像では、2人ともぐっすり寝ている。
  
  
  

深夜になって、ジェフとケニーがやってくる。2人は、「壊す」のではなく、「燃やす」つもりだ。ルディはそのことを知らないし、2人の不良は、ツリーハウスの中にルディがいる可能性を考えもしない〔ルディが壊すのを黙って見ているハズがない→燃やそうとする前に、中にルディがいないか確かめるべきだろう→後で 「事故」とされるが、「未必の故意」だと思う〕。年上のジェフが先導し、ビール瓶に可燃性の液体を詰め、布で栓をした「火炎瓶」に点火し、まず、手下のケニーに投げさせる(1枚目の写真)。ケニーの火炎瓶は壁に当たって落下する。次に投げたジェフの火炎瓶は床下に当たり、ツリーハウスが燃え始める。「やったな」。中から、ルディが「消せ!」と叫ぶ声が聞こえる。中に何人かいると知った首謀者のジェフは、卑怯にもそのまま逃げ出す。直後に レナードが梯子を降り始め、途中で足を踏み外して地面に顔面を強打して気を失う。炎の中からはルディの泣き声が聞こえる(2枚目の写真)。ケニーは気を失ったレナードを、燃え盛るツリーハウスの真下から動かそうとする(3枚目の写真、矢印はレナードの腕)。ルディの声はもう聞こえない。
  
  
  

墓地での短い埋葬シーン。その後、会葬者が部屋で悲しんでいる。ジェイコブの顔にあるのは、悲しみと強い後悔〔「弱虫」と言われた場面が フラッシュバックで入る〕(1枚目の写真)。一番激しく泣いているのは母。父は、押し黙っている。そこに、ディベロッパーが、弔いの言葉をかけて帰ろうとする。すると、父は手を取って引き戻し、「まだ、土地を買う気はあるか?」と訊く。「もし、その気があるなら、後で話そう」。「家でも コンドミニアムでも セブン-イレブンでも建てるがいい。構わん。あんなとこなんか二度と見たくない」。「分かった」。家に戻ったジェイコブは、ルディの使用していたグローブを名残惜しそうにじっと見つめ(2枚目の写真、矢印)、最後に顔に押し当てる〔ここで、ジェイコブの顔の赤アザについてコメント。これは、赤ちゃんとして生まれた時からあった単純性血管腫で、現在ではレーザー治療で治すことができる。さらに、ネットで検索してみたら、兵庫県保険医協会の「健康情報テレホンサービス」の2011年3月の項に、「皮膚科領域のレーザー治療は1983年以降革命的な変化を遂げ、目にみえる傷跡なしに、赤アザや青アザ、茶アザを取り除くことができるようになりました」という書かれていた。ということは、2005年の映画で、ジェイコブに赤アザがあるハズがない。これは、あくまで映画のための「作られたありえないシチュエーション」なのであろう〕。一方、顔面を打って病院に搬送されたレナードの両親に、担当医は、無臭覚症で、かつ、無味覚症だと告げる〔前者は、映画の最後の方の伏線として重要〕。無味覚症はレナードにとって福音だった。確かに何を食べても味がしないのは悲劇だが、医者の言葉によれば、「彼は、重度の肥満症ですから、食欲の喪失は恩恵です」となる。実際、病院で出された食事を、レナードは「これキモいよ。舌にベトつく」と言って食べない。看護婦がリンゴを差し出すと、「リンゴは嫌いだ」。「でも味はしないのよ。ガリガリして気に入るんじゃない」。嫌々手に取ったレナードだったが(2枚目の写真)、その噛み心地が100%気に入り、以後、リンゴしか食べなくなる。最後にメイリーについて一言。彼女は、セラピストの母の診察室で順番を待っていた30代の肉体労働者ガスと出会う。
  
  
  

レナードが退院できてから、ジェイコブとレナードとメイリーの3人は、かつてツリーハウスがあった場所を訪れる(1枚目の写真)。森は父がディベロッパーに売り払ったので、既に宅地化の工事が始まっている。中に、あまり焦げていない窓枠1つと、床材1つをブルドーザーが撤去し、それをジェイコブが悲しそうに見送るシーンがある(2枚目の写真)〔あれほど真っ赤に燃えていたので、窓枠や床材が炭化していないハズがない→映画で「見せる」ための視覚的なごまかし〕。このシーンの後、メイリーは作業員の中にガスがいるのを見つけ 筋肉質の体に惹かれる。
  
  

そして、学校が始まる〔9月の第一月曜日/新学期で、新学年になるが、メイリーの所属していた学内オーケストラの担当教師が、「夏中誰も練習してこなかったのか」と訊くので、学校は変わっていないことが分かる。ジェイコブは夏休みに12歳になったので、前年度は11歳。アメリカでは、5-3-4の地域でも6-2-4の地域でも、11歳は5年生。ジェイコブは12歳になっても同じ学校ということは、ここは6-2-4の地域で、3人はまだ小学校にいることになる〕。学校から戻ったジェイコブは〔同じ柄のシャツを着ている〕、父と母が激しく言い争っているところにぶつかる。それは、ジェフとケニーの処分決定に対する母の憤りだった。「あなたが、私が言ったようにして裁判にも出てれば、こんなことには絶対ならなかった!」。「それは 辛すぎるって止めたじゃないか! 君も同意したろ!」。「あなたが、同意したのよ!」。ここで、ジェイコブが、「何があったの、ママ?」と尋ねる(1枚目の写真)。父は、「ルディを殺した子供たちは司法取引をした。1年間の少年刑務所と、5年間の保護観察だ」と説明する。母は、「1年よ。それがルディの命の価値なの」と言うと(2枚目の写真)、再び逆上する。「なんで、あなたはそんなに平気でいられるのよ! 息子は殺されたのよ!」。「事故だったんだ」。「それなら、許されるの?」〔この父親は、葬儀に日に森を売ったり、『事故だった』と相手を擁護するなど態度が不明瞭。母の方が過激だが、心情は良く分かる/他人の地所内にあるツリーハウスを勝手に破壊しようとしただけで少年刑務所送り相当だと思うし、中に待機している可能性が高いのに、それを確かめずに放火した罪はさらに重い。特に、実際に火を点けたジェフは、放火後すぐに逃走しており、より罪が重くないのは不自然〕
  
  

恐らく翌日、3人が集っている。処分の結果を聞いたレナードは、「ムカついてるの よく分かる」と慰める(1枚目の写真)。ジェイコブ:「あいつらを殺したい。1年くらい刑務所に入ったっていい」(2枚目の写真、如何にも嬉しそうなところが怖い)。この過激な発言に、レナードは同意できない〔黙っている〕。ジェイコブは、「いなくて寂しくない?」「どうだっていいんだ!」と批判する。メイリーは、「どうでもいいんじゃない。ただ…」と言いかけるが、ジェイコブは「人生は続くんだろ〔Life goes on〕」と反論する。メイリーは「折り合いを付けないと。90%の人が過去を乗り越えられなくて問題を抱えてるって知ってた?」と、母のセラピストの言葉を受け売りで話す。「もし、心の整理をしたいんだったら、正面から向き合うことね。2人に会いに行って、思ってることをぶつけなさいよ。少年刑務所は40分で行けるわ。タクシーに乗りなさい」〔メイリーが映画の中で言う、唯一まともなアドバイス〕
  
  

ジェイコブは さっそく家に戻る。父は、仕事もせずにアルコールを大量に飲み、居間で寝ている。母は「怒り発散型」だが、父は「悲しみ鬱積型」。ジェイコブはテーブルの上に置いてあった財布からタクシー代を拝借する。そして、少年刑務所まで行く。中に入るシーンでは、成人の刑務所のように所持品の身体検査までされる。そして、ガラス越しの電話による会話〔少年刑務所でもこんな面会方法を採用するのだろうか〕。ジェイコブが話した相手はケニー〔ジェフと話したかどうかは分からない〕。ジェイコブは開口一番、「憎んでるぞ、分かってるか?!」と怒鳴る(1枚目の写真)。ケニーは謝るどころか、「みんなお前のせいだ。この奇形の間抜け〔deformed retard〕!」と反駁する。ジェイコブは一転して冷静な口調になり、「毎晩、ベッドに入ると、お前の殺し方を考えてる」と話す。「おおこわ」。「包丁でお前の指をちょん切る。そして、鼻、それから、舌だ。次はハサミに代えて耳を切り落とす。お前が見つかった時は、ジグゾーパズルみたいに戻さないとな」(2枚目の写真)。「それを言いに ここまで来たんか?」。「他に何の楽しみがあると思ってんだ? お前は僕の人生を破壊したんだぞ!」。「あれは事故だったんだ!」。「事故なもんか。今度はお前が死ぬ番だ〔pay for what you did〕。地獄みたいに苦しいぞ」。そう言うと、電話をガチャンと切る。本気かどうかは別として、怒りは伝わった。その後、工事現場で働いているガスに、メイリーがランチを持っていき、親しくなろうとする場面が延々と入り、うんざりさせられる〔少年刑務所の迫力ある会話は字幕数16行、1分10秒だったのに、どうでもいいランチの会話の字幕数は48行、2分40秒もある〕。最後に、レナードの家。母が豪華な食事を用意している。レナードが、「お客さんでもあるの?」と訊くと、すべてレナードのために好物を用意し、スパイスを濃い目にしたという返事。しかし、レナードにとって今は、リンゴだけが唯一の好物。母は、せっかく作った料理はあきらめるが、「いつもリンゴばっかりじゃダメよ。不健康じゃない」と言う〔いつもの食事の方がよほど不健康/「りんごダイエット」は有名/このシーンは、字幕数12行、30秒〕。そして、レナードは家から出てランニングを試みるが、隣の家まで走っただけでダウン〔僅か数10メートル〕
  
  

ある日、ジェイコブが帰宅すると、父がエプロンをつけてキッチンの大掃除をしている。父は、どうしたのか訊かれ、「この数週間、私は家に閉じこもり、動くこともできなかった。すべてがルディを思い出させたからだ。そしたら、どこからともなく啓示を受けた。私は生きてるんだとな。お前がいてくれて私たちは何て幸運だったんだろうと気付いた。それで乗り越えられたんだ」。「僕が?」。「ジェイコブ。愛してるよ」(1枚目の写真)。「今日は、あれ以来、初めて仕事にも行った。怖いものなしだ。大学を卒業した時みたいな感じだ」。しかし、こうした父親の高揚感を聞いていると、最初は「父の立ち直り」に喜んでいたジェイコブだが、次第に違和感が募ってくる。ジェイコブは、そんなに簡単にルディを忘れ去ることなんてできない。そこで、「一緒に部屋を片付けて、古きを一掃し、新風を呼び入れよう」などと 呼びかけられると、「しなくちゃいけない?」と断る(2枚目の写真)〔2分ちょうど〕。この後に挿入されるのが、メイリーの演奏会のシーン。そこにガスを招待し、終わった後で会話〔全体で3分45秒もある!〕。そして、レナードのランニング。走る度に距離が伸び、最後には服装も本格的となり、スピードも信じられないほど速くなる(3枚目の写真)。レナードがハロウィーンの際に子供用のお菓子を全部捨ててしまい〔妹の健康のため〕両親から叱られるシーンもある〔合わせても1分30秒/メイリーだけが突出〕
  
  
  

ジェイコブの何回目かの少年刑務所訪問。いきなり映ったのは、ガラスに押し付けられたルディの写真の数々。そして、何とも言えない表情をしたジェフ(1枚目の写真)。彼が、何も言わずに去って行くと、代わりにケニーがブースに来る。ケニーは、受話器を取ると、「奴に、何て言った?」と訊く。ジェイコブは、先ほどと同様、写真をガラスに押し付ける(2枚目の写真、矢印)。「やめろよ」。ジェイコブが写真を引っ込める。「なんで こんなことするんだ?」。「思い出させるためさ」。「忘れられるハズないじゃないか。何ヶ月もここに来ちゃ、思い出させてくせに」。「会うのをやめりゃいいじゃないか」〔面会を拒否できる〕。「独房から出られるんなら何でもするさ」。「独房は狭いんか?」。「ああ」。「じゃあ、棺桶だな」〔ネチネチ〕。「いいか、彼が生き返るんなら、俺は何だってする。けど、できない。ここにいるって、生易しいことじゃないんだ。ジェフを見たろ」。「あいつが、どうかしたんか?」(3枚目の写真)〔如何にも、バカにした感じ〕。「お前のネチネチのせいで、ジェフは完全に壊れちまった〔totally fucked〕」。「いいじゃないか」。「いいか、もう二度とここに来るな」。「自由の国だ。来たい時に来る」。「俺が会うと思うなよ!」。ジェイコブはニヤニヤ笑いながら、怒って去って行くケニーを見ている。このあと、ガスとメイリーが工事現場で会うシーン。無意味な会話の後、ガスが、「ここで、男の子が死んだって知ってたか? 俺達がこの仕事を始める直前だ」と尋ねる。メイリーは一番の親友だったと言った後、火炎瓶を投げつけられて死んだと説明し、「そんなことして殺すなんて想像できる? そんなに邪悪になりきれる?」と訊く。この言葉にガスはショックを受ける。そして、顔を伏せたまま 何も言えなくなる〔伏線〕
  
  
  

ジェイコブの少年刑務所訪問の恐らく翌日。朝食の食卓で、母が笑顔で「ジェフが死んだわ」と夫に報告する(1枚目の写真)。「昨夜、独房の中で自殺したの。キャロルがすぐに電話で教えてくれた。正義は果たされた。区切りがついたわ」。母は心から満足している。しかし、ジェイコブは、自分の行動が自殺を招いたので、複雑な心境だ(2枚目の写真)〔このシーン、非常に重要にもかかわらず、わずか30秒〕
  
  

場面は再び少年刑務所。しかし、今まで違い、ジェイコブはガラス越しの電話ブースではなく、公道に面したフェンス越しに 屋外で集団休憩中のケニーを見ている〔そんなことが可能なのか?〕。それに気付いたケニーは、フェンス際まで来ると、「いったい何の用だ?」と食ってかかる。ジェイコブは、「ジェフのことは、ごめん」と謝る(1枚目の写真)。「お前が 気にするって〔give a shit〕!? 聞いた時、踊り出したんだろ」。ジェイコブは、その言葉にうなだれる(2枚目の写真)。それだけ言うと、ケニーは元いた場所に戻り、頭を抱えて泣き出す。それを見ているジェイコブも辛そうだ〔この重要なシーンも、ちょうど1分〕。その後に、メイリーのシーンが4分45秒も続く。メイリーが夜、ガスの借りている家を訪れたが、留守だったので、こっそり忍び込む。メイリーは勝手に引き出しを開けて回るが、中で唯一重要なのは、そこで拳銃を発見する場面(3枚目の写真)〔重要な伏線〕。その直後、ガスが帰宅し、メイリーはベッドの下に隠れる。ガスはシャワーを浴び始めるが、突然泣き始める。メイリーは全裸で泣いているガスに寄って行き、背中に触れようとして止める〔ジェフの自殺の後に挿入される内容としては、冗長、かつ、きわめて不適切な内容だ/しかも、メイリーが帰宅した後、母と交わす会話まで延々と聞かされる〕
  
  
  

クリスマス。ジェイコブは母からプレゼント(iPod)を渡されてニコニコ顔(1枚目の写真)。父は、ソファに寝そべって何となく元気がない〔このシーン、僅か12秒〕。画面はレナードの家のクリスマスに切り替わる(2枚目の写真)。デブチン一家だけに、集った大家族も全員過食症だ。この映像はレナードの視点からで、カメラが切り替わると、こんなご馳走の前で、リンゴを齧るレナードが映る。そして、再びジェイコブ。母が、「もう一つプレゼントがあるのよ」と言い出す。父は、「もっと後にするんじゃなかったのか」と退(ひ)いている。しかし、2つ目のプレゼントだと思ったジェイコブは、「今すぐだよ!」と催促する。母は、「お父さんと私は、養子について何年も相談してきたの。そして、赤ちゃんを養子にすることに決めたのよ」と嬉しそうに話す。それを聞いたジェイコブから笑顔が消える(3枚目の写真)〔いったい、これのどこが クリスマスに相応しいプレゼントなのだろう? ジェイコブにはショックなだけだ〕
  
  
  

ジェイコブは、さっそくレナードとメイリーに来てもらう。レナードは、「心配すんな。白人の子は滅多に手に入らないんだ」(1枚目の写真)「『60 Minutes』で詳しくやってた。有能な〔worth its salt〕養子縁組あっせん業者でも、順番待ちリストは最短でも3年だそうだ。両親が養子をもらう頃には、お前は大学に行ってるさ」。それでも、ジェイコブの心は晴れない。「その子は、ルディの代わりなんだ」(2枚目の写真)。その時、メイリーが 喉が渇いたと言い出し、レナードに取りに行かせる。そして、ジェイコブと2人だけになると、「隠してといて欲しい物があるの」と言い出す。「何?」。「びっくりしない?」。「まさか」。メイリーは、ガスの家から持ち出した拳銃を出して見せる。「なんだよそれ!」。「びっくりしないって言ったじゃない」。「だって 拳銃だよ!」。ジェイコブは、拳銃を手に取ると、「どこで手に入れたの?」と訊く。「話せない。しばらく隠しといて欲しいの」(3枚目の写真)。「なんで、置いとけないの?」。「ウチのお母さん、すっごい詮索好きなの。私の持ち物、いつも調べられてる。お願いよ、ジェイコブ。誰かの命が、それにかかってるかもしれない〔メイリーはは、ガスが異様な感じで泣いている様子を見て 盗み出した〕」。ジェイコブは、仕方なく、貴重品を入れる缶の中に拳銃を入れる」〔大きな伏線〕
  
  
  

ジェイコブは、少年刑務所の家族面会日にケニーに会いに行く。恐らく、あの衝撃の自殺から、数回目だろう。2人は屋外のテーブルに向かい合っていて、和やかな空気が流れている。ジェイコブはお土産に「X- MEN」の掲載誌を持ってきている(1枚目の写真、矢印)。「じゃあ、帰るよ」。「待てよ」。ケニーは思い切って打ち明ける。「仮釈放委員会は、俺を模範囚だって思ったみたいで、早期釈放にしてくれる」。「そんなことできるの?」。「さあな。そう決めたんだ。腹が立つだろ? 分かってる。だけどあれは事故だったんだ」。「じゃあ、出てくるんだ。学校に戻るの?」。「戻るもんか。ニュー・メキシコに行く。親父と一緒に、牧場で働くんだ」。「州を出れないよ。保護観察違反だ」(2枚目の写真)。「親父は誰にもバラさない。俺が出てったって、誰も気付くもんか」。「母さんは?」。「俺がここにいる間、会いに来たのはお前一人だけだ」〔ジェイコブの顔からは、彼が、早期釈放をどう捉えたのか全く分からない〕。その後、メイリーが化粧をして現場のガスにランチを持って行く長いシーン〔2分45秒〕と、レナードの父と娘たちがフロリダに出かけ、母と2人だけで家に残る短いシーンが入る。父たちと別れた後、レナードは、半地下室にマットレスを運び込むと、窓に何枚もの板を電動ドライバーで固定し、開かないようにする〔50秒〕
  
  

ある日、ジェイコブが自室にいると、母がドアを開け、「今 帰ったわ。彼、来たわよ。こっちにいらっしゃい」と笑顔で言う。何だろうとジェイコブが出て行くと、そこにいたのは、新しい「弟」。黒人の少年は「お会いできて嬉しいです〔It's nice to meet you〕」と丁寧に挨拶し、笑顔で手を差し出す(1枚目の写真)。しかし、事前の連絡も何もなかったジェイコブは、愕然として じっと見るだけ〔母の「赤ちゃん」というのは間違いだったし、レナードの「白人なら最短3年」も間違いだった。ジェイコブが動揺するのも当然だろう〕。その次に、レナードの極端な「母親救済作戦」が紹介される。TVの前でお菓子を食べていた母親を、「助けて」と嘘を付いて呼び出し、母が地下に下りて行くと、そのまま階段を駆け上がってドアを閉め、外側から、何枚もの板を電動ドライバーで固定し、母を閉じ込める。一方、ジェイコブは、弟を自分の部屋に連れて行き、2段ベッドの上段に寝ろと命じる。そして、「気を悪くするなよ。だけど、想像もしてなかった。未来の弟とがこんな “brother” だとはな」 と言いながら、少しだけ前かがみになる(2枚目の写真)〔“brother” には、“black guy(黒人)” という意味もある(www.urbandictionary.com)。前かがみになったのは、「猿の惑星」からの連想で 「黒人」という意味を強調したかったのかも?〕。それを見聞きした「弟」は、「僕も想像してなかった。未来の兄ちゃんが顔にクールエイド〔アメリカで売られている粉末ジュース〕の染みを塗り付けてるとはね」と反撃する。ジェイコブは、「くそったれ! これは母斑だぞ!」と怒鳴りつける。2人の関係は最初から最悪だ。ここで、もう一度レナード。彼は、唯一開けられる小さな窓から、生野菜の入ったサラダボールとリンゴ2個、ペットボトル1本を入れる(3枚目の写真)。そして、「ママの命を助けたいんだ」と説明する。「命なんか助けて欲しくないから、とっととドアをお開け!」。「大好きだから、こんなことするんだ」。母が怒って棚の上の食べ物を床に払い落とすと、レナードも怒って窓を閉め、窓を板で覆う〔この地下の部屋にはちゃんとトイレもある→何日でも閉じ込めておける〕
  
  
  

5度目で最後の少年刑務所のシーン。今回も家族面会日(1枚目の写真)。ジェイコブは、「一日だって、あんな家には住んでたくない。君と一緒にニュー・メキシコに行きたいよ」と頼む〔黒人の弟に嫌気が差した〕。「無理だな。お前、路上生活したことないじゃないか」。「だから?」。「家から逃げるくらい1人でもできるだろ。よりによって、俺と一緒に行きたがるなんて」。ここで、ジェイコブは、殺し文句。「あれは事故だった」(2枚目の写真)。さらに、「僕、役に立つよ。必要なもの、何だって用意する。釈放され次第、行こうよ。お願いだ、ケニー」。兄の命を奪われた弟が、「事故」だと認め〔許すということ〕、懇願までされれば 拒否はできない。「お前がしたいなら、いいだろう」と答える〔この重要なシーンが、僅か1分〕。ここで、場面はレナードの家に。彼はキッチンで調理を終えた後、掃除をしていて うっかりガス栓を開けてしまう。しかし、無臭覚症のためガスの臭いに気付かない。一方、母は空腹に耐えかねて 床に転がっているリンゴを食べ、その美味しさに開眼する〔2分〕。次いでメイリー。またまた、ガスの家に入り込み、きれいにベッドメイクしたあとで、ナイトガウン1枚だけになり、「恋人」を待つ〔1分40秒〕。もう一度、レナードの家。レナードは、一酸化炭素を吸って意識がなくなる。地下に閉じ込められた母は、ガス臭に気付き、「火事場の馬鹿力」でネジ止めされたドアを突き破る(3枚目の写真、矢印)〔2分〕。もう一度ガスの家。帰宅したガスの前でメイリーはガウンを脱ぐ。ガスは、それを見ないようにして母親を呼び、家に連れ帰らせる〔12歳の少女らしくない不愉快な場面/1分30秒〕
  
  
  

病院では、レナードが無事目を覚ます(1枚目の写真)〔1年近くもリンゴだけなのに、顔がちっとも痩せていない…〕〔40秒〕。次のシーンは、メイリーの母の診療室で、ガスとの会話。その中で、ガスは昔 消防士で、家族全員が焼け死んだ火事の後、中に入って行ったら、顔の半分が焼けただれた少女を発見した。少女は激痛のため、殺してくれと頼んだ。たとえ死ななくても、障害に一生苦しみ、孤児として辛い思いをするだけなので、ガスは少女の願いを聞いてしまった〔4分/それ以来、ガスは罪の意識に苛まれ、拳銃を買ったのも自殺を考えたから。シャワー室で泣いたのもそのため。その時の拳銃が、回り巡ってジェイコブの手元にある〕。次のシーンは、ケニーの住んでいた家。釈放された当日であろう。ケニーが家の中から持って行く荷物を出している(2枚目の写真)。「雨が降るとか言ってた。だから、ポンチョを入れた」。ジェイコブは突っ立っているだけだ。「お前、どっか変だぞ。おじけづいたんじゃないよな?」。「違う」(3枚目の写真)。「俺、すっごく楽しみにしてるんだ。お前、びくびくしてるように見えるぞ」。「違う」〔わずか30秒のシーン。すごく重要なのに、ジェイコブが何を考えているのか分からない⇒一緒に行くと言ったのを後悔しているだけなのか? どうやって殺そうかと考えているのか?〕
  
  
  

ジェイコブは自宅に戻り、荷物を作っている。その時、「弟」が、ルディのグローブを手にはめ、「キャッチボールしない?」と誘いに来る。ジェイコブは、「それを どっから持って来たんだ?!」と激しく詰め寄る(1枚目の写真、矢印はグローブ)。そして、グローブを取り上げ、「これに触るなって言わなかったか? どうだ?!」と罵る。「いいか、このウチにある物はすべて、すべてだぞ、僕の物だ! 分かったか?! お前は 何一つ触るな。このグローブもだぞ!」(2枚目の写真)〔このシーンも30秒〕
  
  

その後、ジェイコブは、食卓に1人で座って昔の写真を見ている母に、「今度は、どうしたの〔what's wrong〕?」と訊く。「あなたとルディが産まれた時の写真を見ていたの」(1枚目の写真)「あの子に会いたいわ」。「だけど、キース〔「弟」の名〕がいるじゃない」。「何が言いたいの?」。「キースをもらった。男の子が2人。すべて元通りだ」。「ルディの代わりにキースを養子にとったんじゃないわ」。「そうなの?」。「違う。お父さんと2人で何年も議論したのよ。話したでしょ」。ジェイコブは、母の曖昧な態度にキレて、思っていたことを口に出す。「もし、死んでたのが僕だったら、乗り越えるのに他の子なんか要らなかったろ」。母は、この誤解にびっくりする。「何 言ってるの? 息子に何か起きるなんて、思うハズないじゃない」。「でも、1人死んだんだ。賭けてもいい。どちらか選べるんだったら、僕に死んでて欲しかったろ」。母は言葉を失う。それでも、精一杯、心の丈(たけ)を訴える。「あなたが、『私たちはルディの方が好きだった』 と感じてたのは知ってるわ」。「そうじゃないか。認めろよ」。「あの子の方が育て易かったことは認めるけど、より愛してたわけじゃない。ジェイコブ、あなたは普通じゃない状態で産まれたのよ。挑戦だったわ」。「母斑のこと?」。「そうよ。普通と違うのは 大変なことなの」。「僕は、異常じゃない」(2枚目の写真)「いつだって、『僕は どこかおかしい』って思わせてきたじゃないか! 僕のせいじゃないのに!」。「分かってる…」。「分かってるもんか! 僕を どう扱ったらいいか分からないんだ。ずっとそうだった!」。「そんな風に思ってたのなら ごめんなさい。でも、あなたは私の息子で、あなたを愛してる。あなたのためなら何でもする。戦うことも。殺すことも、死ぬことだってできる!」。「ルディも同じこと言ってた」。「あの子は正しいわ。キリスト教の精神に反するけど、今でも願ってるの。『ルディを殺した子が死ねばいい』って」(3枚目の写真)「あなたも大きくなれば理解できるわ。いつの日か」〔極めて重要な言葉〕。夜がふけ、ジェイコブは鏡の前に立って自分自身を見つめる。これから、どうすべきか、悩んでいたに違いない。その時、鏡の中にルディの顔が見えた。ジェイコブを見ながら「それでいいんだ」とでも言うように頷くルディ(4枚目の写真)。ジェイコブの心は決まった〔母との会話を含め、4分弱の最重要の場面。ジェイコブ役のConor Donovanの演技の見せどころ〕。
  
  
  
  

深夜になり、かつてのルディのように、ジェイコブも窓から出て行く(1枚目の写真)。外は、予報通り かなりの雨。待ち合わせ場所に行くと、ケニーから「遅いぞ」と叱られる(2枚目の写真)。そして、これを着ろと、レインポンチョを渡される。ジェイコブはバッグからホッケーマスクを取り出して被る。「何のつもりだ?」と訊かれると、「変装道具 持って来なかったの?」と答える。「俺のことなんか、誰も調べるもんか」。ジェイコブは、「変装」のためマスクを被る〔実際には、兄の仇討ちという「儀式」のため、焼死事件当時の姿に戻った〕。そして、森に向かって歩き出す。「どこに行く気だ? 道路はこっちだぞ」。「だけど、建設現場を通れば近道できる」。「そうだな」(3枚目の写真)「後についてくよ」。一方、レナードが入院している病院では… 彼は、同じく入院中の母の部屋に行く。母は、①今度の事故は 「ガス漏れ」のせいにすると言い〔父親には内緒〕。②レナードの「過食は命取り」の主張を理解し、今後は食事に気をつけるとともに、ランニングも試みることにも合意する。
  
  
  

ジェイコブは、ツリーハウスのあった場所の付近まで来ると、立ち止まってバッグを地面に置く。それを見たケニーは、「何て奴だ! やっぱり おじけづきやがった」と批判するが、ジェイコブはそれに構わずバッグから拳銃を取り出し、ケニーに向ける。ケニーは、「どこで手に入れた? ホンモンか?」と訊くが、ジェイコブは震えながら拳銃を向け続け、何も答えない。そして、撃鉄を起こすと、「お前は、ルディを殺した」と泣きそうな声で言う(1枚目の写真)。ケニーが、「なあ、やめ…」と言いかけた時、拳銃は発射された。ケニーは死んで倒れ、ジェイコブは反動と衝撃で倒れる。ゆっくりと起き上がったジェイコブは、ケニーの死体を工事中の家の基礎まで運ぶ。敷地には壁を支える間仕切りのコンクリート土台の木枠が組まれ、床の部分は まだ土のまま。ジェイコブはそこを掘る(2枚目の写真、矢印はショベル)。ジェイコブは死体を穴に入れ、中に、バッグ、もらったレインポンチョ、ホッケーマスクを投げ込むと、平らになるよう土を被せる。雨が激しく降っているので、埋めた跡は全く分からない。びしょ濡れの状態で自室に戻って来たジェイコブは、まず、「弟」のキースのベッドにルディのグローブを置いてやり、それからおもむろに濡れた服を脱ぐ。目覚めたキースは、グローブを贈られたことで、微笑みながらジェイコブを見る(3枚目の写真)。
  
  
  

最終章。ケニーを埋めた跡には、一面にコンクリートの「ベタ基礎」が流し込まれ、そこに死体が埋まっていることが完全に分からなくなる(1枚目の写真)。レナードの家では、帰宅した父と2人の妹にも、サラダだけの健康食が母によって用意された(2枚目の写真)。最後に、自転車で帰ってきたジェイコブは、玄関の階段に置いてあったバスケットボールを手にし(3枚目の写真)、その姿を母が嬉しそうに見る。ジェイコブは、これからもっと活動的な少年になっていくであろう。それを示唆しつつ、映画は終る〔ジェイコブによる、「殺意をもったケニー殺し」を肯定しているのは怖い/ジェイコブはジェフも自殺に追い込んでいるので二重殺人になる〕
  
  
  

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